それは突然に訪れるものです

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「なんですか?」  何か言いたいことがあるのなら、正直に言ってほしい。それが悪いことであっても。 「――岩倉が死んだよ」  高見さんの口元がカクカクと動いて見えるほど、私の心臓の鼓動がゆっくりになって止まってしまうような感覚に陥った。 「どうして……、禅さんですか?」  もしかして、禅さんは岩倉さんのことも始末したのだろうか? 「いや、奴の会社が潰れたのはあいつの仕業だと思うけど、死んだのは別だと思う」  険しい表情で海を見つめながら高見さんが言った。 「別……?」 「手口が違った。岩倉を殺った奴は殺しを隠そうとしてなかったんだよ。奴は元々ヤクザで、何か依頼されてたことに失敗して消されたんだと思う」  一体、どこまで聞いて良いのか分からないけれど、どこまでも聞きたくなる。だって、分からないことが怖いから。 「何か、ってなんでしょう?」  気になって私はジッと高見さんの顔を見つめた。そっと視線がこちらに移動してくる。真剣な眼差しが、刑事としての視線が、ゆっくりと口を開いた。 「……都築ちゃんを痛めつけて消すこと、かな」  確かに岩倉さんの目的は私を禅さんから引き離すことだった。でも、何故なんだろう? 「どうしてですか? どうして私を?」  自分で考えてみても答えは見つからなくて、気が付けば、高見さんの腕を掴んでいた。 「それを教える前に、答えてほしいことがあるんだ」  高見さんは私と違って落ち着いた様子だった。そして、慎重でもあった。私は何も言わず、彼の次の言葉を待った。 「君は、どうして禅と一緒に居るの?」  彼の言葉にしては意外なものだった。  ――どうして、皆同じことを聞くのだろう? 禅さんに興味があるのか、とか。 「あの人が一緒に居たいと言ったからです……と言いたいところなんですけど、先日、私も一緒に居ないと寂しいことに気が付いたので」  俺様で、不器用で、頑固で、態度も言葉も酷いあの人が近くに居ないと、とても寂しかった。 「禅のことが好きなの?」  高見さんが、とてもストレートに質問してくる。 「どうでしょう? 分からないんです。私、人を好きになったことがなくて……、でも、多分、好きなのかもしれないです」  好きという感情を知らないのにタイプだけは決めてて、私のタイプは高見さんみたいに優しくて正義のヒーローみたいな人だったのに。あんな俺様じゃなかったのに……。でも、いつの間にか、私の中で禅さんは優しくて正義のヒーローみたいな人に変わっていた。だから、あの人は私のタイプの人なんだと思う。 「分かった。じゃあ、場所を変えよう」  私の答えを聞いて、突然、高見さんが立ち上がった。
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