それは突然に訪れるものです

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 ◆ ◆ ◆  高見さんは私を車に乗せて、海の近くの遊園地に連れて来た。そして、回数券を買って、観覧車に乗り込み、彼は「本当は夜景を見せてあげたかったんだけど、この話を聞いたら君はすぐに禅に会いたくなると思って、最後のデートスポットに来たんだ」と言った。  どんな話をされるのか、私にはまったく予想が出来ない。 「さて……、全部の話は禅の過去に繋がってる。この話を聞いても、絶対にあいつを責めないであげてほしい」 「……」  なんとも言えなくて、私は口を閉じたままでいた。高見さんも私がまだ何も言えないことを分かっていたのだろう、そのまま話を続けた。 「一年くらい前、禅は取引先の人間との付き合いで高級クラブに行くことになった。あいつは人間が嫌いだったから、ほんとに付き合いだけで、店の女の子とか、金と容姿目当てのやつは皆軽く流してたらしい。でも、その中で一人だけ、誰にも媚びなくて、禅にも興味を示さない、強くて綺麗な女性が居た。笹塚真野(ささづかまの)という若い女性だった」  まさか女性の話をされると思っていなくて、少しだけ自分の心が騒いでいるのを感じる。 「禅は彼女だけが自分にとって普通に見えて、時折、自分から会いに行くようになった。多分、惹かれてたんだろうな。その関係がどこまでいっていたかは分からないけど、ある夜、事件が起きた」  ズキン、ズキンと心が痛む。ただ、禅さんと一人の女性の話をされているだけなのに。  ――どうしてだろう……? どうして、こんなに心が騒ぐんだろう……? 私が禅さんのことを好きだから? 好きだって気が付いたから? 「事件……」  高見さんの言葉に引き摺られるように私の口から同じ言葉が洩れる。彼は私を見つめて、小さく頷いた。 「彼女を家に送っている途中で、禅のことをヤクザだと思った蓮葉組の奴らが、あいつと彼女を襲ったんだ。もちろん、奴らの推測に過ぎない。だが、普通に生活していても、情報を全てシャットアウトすることは難しい。疑いを生む何かがあったんだろうな。襲って、禅の目の前で彼女を撃ち殺した」 「……っ」  衝撃的な事実に思わず息を呑む。
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