それは突然に訪れるものです

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 確認のために手を入れたら、何か紙のようなものに触れた。しかも、厚みから一枚ではないらしく、そろりと取り出してみると、それは白いポチ袋のようだった。  私が入れたものではない。最初から入っていたのか、それとも梓さんが忘れたものなのか、はたまた、高見さんが入れたものなのか、パッと見では分からなかったけれど、すぐに二人ではないと気が付いた。  何故なら、そのポチ袋には『禅さんへ』と書かれていたからだ。  誰かが禅さんへ当てた手紙。でも、高見さんや梓さんは禅さんに『さん』は付けない。流川さんも。だから、これは私の知らない誰か、からの手紙だ。  ポチ袋とジッとにらめっこをしながら、中身を見ようかと悩む。罪悪感に駆られる。「誰かの手紙を勝手に見てはいけない」「見たことを言わなければ大丈夫」と頭の中で良い自分と悪い自分が戦った。  それで結局 「禅さん、気が付いたら、私のバッグにこんなものが入っていたんですけど……」  さっき、離れたばかりの禅さんの元に戻って、手紙を差し出した。 「……」  ベランダに出ていた禅さんは、私からそれを受け取って、眉を潜めた。硬さとか、重さからカッターナイフの刃とかは入っていなさそうだったけれど、本当のところは中身を見てみないと分からない。  表情を変えないまま、禅さんがポチ袋を開け、一枚の小さなメッセージカードを取り出した。彼の視線がそこに書いてあるであろう一文をなぞっていく。すると 「……っ! これをどこで誰にもらった!?」  一瞬で彼の表情が一変して、私に詰め寄ってきた。 「ぇっ?」 「どこで入れられたか記憶にないか?」  必死な顔で禅さんが私の頭の中を探ろうとしてくる。 「どこって……」  頑張って、今日の記憶を掘り起こして、それらしき人を探した。ずっと高見さんと一緒に居て、誰かが近付いてきた瞬間はなかった。多分、彼が積極的にガードしてくれていたのだろう。だから、バッグに手紙を入れられる人なんて…… 「あ! 水族館のトイレで女の人にぶつかられました!」  勢い良く私にぶつかってきたときに入れたんだ。 「その女、どんなやつだった?」  そう言われても言葉では説明出来ない。私が困った顔を向けると、禅さんは「この顔か?」と一枚の写真をスマホの画面に映して見せてきた。 煌びやかなドレスを着ている髪の長い綺麗な女性だった。 「よく分かりません、サングラスを掛けていたので。――でも、口元が似ている気がします」  正直分からなくて、目の部分だけを指で隠してみたら、口元は似ているように見えた。目元が見えなかったために、彼女の口元ばかりを見ていたのだ。 「これって、もしかして……」    私が気が付いてしまった真実を口にしようとしたときだった。 「お前、今すぐ高見荘吾と結婚しろ」  禅さんの言葉の方が、先に私に届いた。  ――へ?
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