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「……っ」
微かに地下ごと揺れている。私は怖くなって、車のハンドルをぎゅっと握った。
「社長!」
駐車場の坂になっているところから、さっきの守衛さんが走ってくるのが見えた。その姿はすぐにこちらに近付いて、禅さんの前で呼吸を乱しながら「社長、大変です! エントランスで爆発が!」と言った。
「分かった。急いで救急と消防に連絡を」
冷静な態度で禅さんは守衛さんに指示を出し、私の方を向いた。
「流川が来るまでドアと窓に鍵を掛けて絶対に外に出るな」
社長として、禅さんは様子を見に行かなければならない。それは当然のことで、寧ろ行かなければ、社員からも世間からも批判を買うことになる。
「分かりました」
そう言って、私は素直に頷いた。そして、開けていた窓も閉じる。強い心を表わすような、そんな瞳が一瞬私をジッと見つめて、守衛さんと共に去っていく。
「禅さん……」
何が起こったかなんて、そんなに頭の良くない私にだって分かる。禅さんの正体を暴こうと躍起になっている人間が、遂に表で行動を起こしてきたのだ。ヤクザの世界のことは分からない。でも、組同士の争いで、誰かが傷付こうとしていることだけは分かる。
どうしたら争いを終わらすことが出来るのか、誰か教えてほしい。
コンコンッ
突然、助手席側の窓を誰かがノックした。意識を現実に戻して、そちらを見てみる。流川さんが来たのだ、と思った。でも、そこに居たのは……笹塚真野だった。
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