愛しいあなたに身も心も捧げます

5/6

1493人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
 ◆ ◆ ◆ 「禅さん……」  被膜を纏った禅さんのモノが私の蜜口に宛がわれる。丁寧過ぎるほど、トロトロに解かされて、私のそこは愛蜜で溢れていた。でも、痛いのは怖くて、彼の名を呼ぶ唇がわなわなと微かに震える。 「分かってる。怖いんだろう?」  優しい瞳が私の頬を撫でる。そして、そっと額に、唇に、とキスを落とした。 「手、握れ。噛んでも良いぞ?」  左手を私に寄越して、禅さんがふっと笑う。私の緊張をほぐそうとしてくれているのだと分かっているけれど、私は強ばった顔で彼の手を両手でぎゅっと握りしめることしか出来ない。  ――どうしよう……、とても緊張する……。 「好きだ。ごめんな」 「……あ、ぅっ……!」  優しく囁いて、禅さんの熱い昂ぶりがメリメリと膜を引き裂いていく。 痛みと、自分の中が満たされていく感覚に襲われ、また混乱して、禅さんに涙目を向けてしまう。それを見て、禅さんも苦しそうな顔をしながら、すべてを私の中に収めた。途中で止める方がツラいと思ったのだろう。 「よく頑張ったな」  大きな右手が私の頭を優しく撫で、痛みに堪えたことを褒めてくれた。 「禅さ……ん……っ」  じんじんと残る蜜口の痛みと、禅さんと一つになれたことへの幸福感、それと、強い快楽に変わろうとしている未知の波、すべてがいっぺんに来て、自然と涙が零れた。 「泣くな。動けなくなるだろう?」  困ったような顔をして、禅さんが私の涙を右手で拭う。その姿をジッと見つめて、ああ……、私、やっぱりこの人が好きなんだな、と思った。 「私……っ、禅さんが好き、大好きです……」  思ったら、愛が口から溢れて止まらなかった。俺様で態度や言葉が悪くても、感情を表わすのが不器用でも、私は禅さんが好きだ。  ――言えた……。やっと、言えた……。ずっと、ずっと、気が付いても隠してきた心の声を禅さんに……。 「……っ、お前、煽るな……! 初めてのくせに、泣いても知らないぞ?」  くっという顔をして、禅さんは私の腰を強く掴んだ。私には禅さんのその行動が、動きそうになった自分をどうにか押さえた、ように見えた。 「もう、泣いてます……。好きです、禅さん……」 「俺もお前が好きだ。だから、もっと啼かせる」  耳元で低く囁かれて、ゾクゾクと電流のようなものが私の背中を走った――。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1493人が本棚に入れています
本棚に追加