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「匂いで吸いたくなるからだ」
「何も言ってないじゃないですか」
ムッとした顔で言われたから私も同じ顔で返した。それより、この人に聞きたいことがある。
「――あの、私はいつになったら解放してもらえるのでしょうか?」
胸のサイズまで測られて今さらなんだ? と一番思っているのは私だ。でも、まだ微かに希望を持っていることは馬鹿なことだろうか?
「解放? お前の所為で大事な取引が一件消えたんだぞ?」
腕を組んで、彼が呆れたような顔をする。
「え、そ、そうだったんですか? それは、すみませんでした」
本当にそれは知らなかった。彼の目の前に立って、深く頭を下げる。これでこの俺様が許してくれるなんてこと……
「謝って済ませられることじゃない」
ですよね。
「なら、どうし……まさか殺すんですか? 殺すなら、痛いのは怖いので首を絞めるとか、そんな感じでお願いします」
私は一体何をお願いしているのだろうか。普通、お願いするとしたら「殺さないでください」でしょう。頭のどこかでは分かっているはずだったけれど、いざ口にしてみたら全然言葉が言うことを聞かなかった。
ジッと黙って私を見つめる彼の瞳からは何も読み取れない。
「……っ」
彼の左手が、ゆっくりとこちらに向かって伸びてくるのが見えて私は息を止めた。
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