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「ふぇ?」
確かに、大きな左手は私の首を捉えた。でも、そのまま自分の方に引き寄せるようにされて、気が付けば、首を掴まれた状態で後ろ向きに拘束されていた。スーツの上からでも分かる彼の逞しい胸板に私の背中が密着して……
「そんなに簡単に殺すわけがないだろう? お前は俺のオモチャだ」
耳に物騒な言葉を吹き込みながら、自由な右手が私のシャツの下に潜り込んでくる。すぐにその手は私の胸に到達して、ブラの上から右の膨らみを揉み始めた。
「あ、や、なんでそうなるんですか……!」
身体を捻りながら彼の手から逃れようとするけれど、今度は左手に少し力を込められて、頭がフワフワしてくる。
「お前が面白いことを言い出すからだ」
左手を緩めて、私の耳元でくくっと笑いながら彼の右手がスルッと後ろに動く。
「え、嘘!」
彼は片手で私のブラのホックを外してみせた。まるでマジシャンみたい……なんて感心している場合ではない。
「だから、私は好きな人としか、こういうことは……」
「“好きだ、愛してる“――これでいいか?」
「んっ、ダメです! よくないです! 棒読みじゃないですか!」
人の耳の弾力を楽しむみたいに甘噛みして、耳の中に掠れた声を吹き込まれた。でも、その言葉たちには全然感情が込められていなくて、取り敢えず言った、という感じしかしなかった。
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