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「駒田都築」
私の視界の外で冷え切った声がする。返事をしようにも緊張して声が出なくて、猫が控え目に鳴くときの「……ぁ」の音しか出なかった。
「ひっ」
恐る恐る彼の姿を探そうとした瞬間、私の上に影が落ちた。つまり、彼が寝転んでいる私のことを横から見下ろしているのだ。
「す、すす、すみませ……」
謝っている意味が自分でも分からないが、慌てて身体を起こしてその場で立ち上がると、獲物を狩るようなギラギラとした瞳と視線が合致した。
「へ?」
――なんか、怒ってる!?
黙った禅さんにジリジリと距離を詰められ、後退りで逃げるとさらに距離を詰められ、結局、壁まで追い詰められた。鋭い眼光が私に迫る。
「な、なんですか? 私、何か……んんっ」
突然、何の脈絡も無く、噛みつくようなキスをされた。ミントの香りのするキスだ。しかし、それを気にする余裕もすぐに無くなった。
「んう……!」
あまりに激しいキスに上手く息継ぎが出来なくて、ゾクゾクするような感覚に足から力が抜けそうになる。
「んっ、ん!」
とめてください! という気持ちを込めて、禅さんの胸をトントンと手のひらで叩くとやっと彼は私の唇を解放してくれた。
「……っ、なんなんですか?」
一人だけ肩で息をしていて恥ずかしい。不満そうな瞳がジッと見下ろしてくるけれど、私は禅さんをキッと睨み付けた。そんな私を見て、彼の口角が少し上がったのが分かる。
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