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「あの……!」
「言う気になったか?」
「いえ、あの! えっと、あの!」
「なんだ?」
怪訝そうな雰囲気を出されても、そんなにさらりと人に言えることじゃない。だって、私……いやいや、でも言わないと! ちゃんと抵抗しないと!
「私! 初めてなんです!」
「は?」
恐怖で身体はガチガチだけれど、勇気を振り絞って大きな声で叫ぶと彼の動きが止まった。
「……こういうこと、されるの……っじゃなくて! 私、運転代行の仕事をしてまして、あなたに依頼されたはずなんです!」
「運転代行……? 依頼、してないぞ?」
「え?」
私が間抜けな声を漏らした瞬間に、スラックスのポケットで私のスマホが震えだした。
「あの、多分職場からなので電話に出ても良いですか?」
冷静になって考えてみたら、勘違いされて急に襲われて本当は怒りたい気分なんだけど、まずは何が起こっているのか確認がしたい。だから、私は彼から返事が来る前に黙って電話に出た。
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