般若の貴公子は敵の船に現れる

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『終わったか?』  禅さんの声が聞こえて、何故だか、少しホッとした。 「はい、バックヤード以外も見ましたが、何もありませんでした。ただの豪華客船です」  何も見つからなかった。私の入れる範囲では。 『そうだろうな、先に入ってた人間からそう聞いてる』 「へ?」 『早く戻ってこい、幸薄貧乳』  その声は、少しだけ笑っているような気がした。 「酷いですよ! 知ってたんですか?」  やっぱり、嘘吐きだ。私を脅して楽しんでいたんだ。私は頑張って、あなたの信用を勝ち取ろうとしてるのに。 「じゃ、じゃあ、戻りま……っ!」  突然のことだった。頭に激しい衝撃と痛みが走り、身体が鉄の床に転がった。ヘッドセットも外れて、どこかに転がり、うっすらと意識が遠退いていく。 「ぜ、ん……さ……」  ブラウン管のテレビが切れるように、プツンと意識が途切れた。
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