般若の貴公子は敵の船に現れる

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 ああ、私、死ぬんだ、と思う直前に、どうして私は心の中であんな俺様最低人間に助けを求めているのだろう、と思った。あの人は助けになんて来ないのに。 「……!」  突然、パンッ、パンッ、と何かが弾けるような音がした。次いで、金属の扉が勢い良く開いて、手術着を着た人間が壁際に吹っ飛んでいった。 「駒田都築さんですか?」  ライトの下に現れたのは顔に大きな傷のある三十代くらいの男性だった。強面で、とても怖い。どうして、私の名前を知っているのだろうか?   誰か分からなくて、私は涙でぐちゃぐちゃの顔のまま固まってしまった。 「駒田都築さんで間違いないですか?」  再度尋ねられて、やっと黙って頷く。 「六道組、(さかえ)です。俺が見落としていた所為で巻き込んでしまって申し訳無い」  私の身体を拘束しているバンドが次々に外されていく。  ――この人が先に潜入していた人? 「こっちです」  栄さんが先に部屋から出て、私を呼んだ。バクバクと心臓が暴れたままで、慎重に彼のあとを追って部屋から出る。  部屋の外は大きな貨物室だった。巨大なコンテナが二段ずつ積まれて並べられている。今まで居た部屋の扉の近くには黒いスーツを着た男性が血を流して倒れていた。そして、栄さんも、また
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