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「栄さん、血が……」
撃たれたのか刺されたのか分からないけれど、左足から血が出ていた。
「大丈夫です。離れないでください。あなたを守れないと結局、若に殺されます」
手に銃を構えて、栄さんがコンテナの陰に向かう。私は震える足であとについていくことしか出来ない。
「くっ……」
三つ目のコンテナの陰に移動したときだった。栄さんの足が止まり、彼は苦しそうに顔を歪めながら、その場に片膝を着いてしまった。
「栄さん、やっぱり……」
――見た目より重傷なんだ……。
「すみません……ッ」
彼の左足から血がだらだらと垂れている。
「あの、これを」
私は自分が着ていたサロンからグラスを拭くための白い布巾を取り出して、彼の左足を縛った。
「……ありがとうございます」
苦しそうで、冷たい表情だった。この状況じゃ仕方がないことなのだろうけど、その表情がとても怖かった。
「おい! どこに逃げた?」
「隠れても無駄だぞ!」
「殺してやる!」
「お前らもバラバラにして売り捌いてやる!」
コンテナの至る所から物騒な言葉が聞こえてきた。
「すみません、囲まれてしまいましたね」
「バラバラって……」
「この船で臓器売買を行っていたようです」
銃を構えながら栄さんが言う。そして、耳にスマホを当てて、誰かと話をし始めた。
「はい、すみません、分かっています。――駒田さん」
血だらけの手にスマホを手渡され、急いで耳に押し当てる。
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