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◆ ◆ ◆
ハッとなって目が覚めた。瞳だけで周りを確認すると、自分は禅さんの寝室で眠っていたのだと理解した。
「起きたか?」
ベッド横の椅子に禅さんが座っていた。部屋の入口には流川さんが立っている。ズキズキと痛む頭で身体を起こして、私は
「……ッ」
禅さんの頬を力強く打った。
「どうして……、どうして私を助けたんですか! どうして、栄さんを見捨てたんですか!」
部下である栄さんを救わずに、会ったばかりの私を助けたあなたはおかしい。
「若……!」
「良い」
心配して声を上げた流川さんのことを手で制止して、禅さんが口を開いた。
「何故、さほど知らない奴のためにそんなに怒る必要がある? あいつはミスをした。ああなったのは自分の落ち度だと、あいつも理解していた。その上で、負傷して動けない役立たずなんて、置いて行かれて当然だったんだよ」
私に頬を打たれて、顔色一つ変えないなんて、あなたはおかしい。
「ふざけないで! 人の命をなんだと思ってるの! ……っ」
もう一度、彼の頬を打とうとして、寸前で腕を掴まれて阻止された。
「さあ? なんだろうな?」
「……っ、私を見捨てれば良かったのに……」
――生きている意味の分からない私を。
涙が溢れて止まらない。そんな私に彼は
「俺を殺せ、駒田都築」
と銃を手渡した。
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