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「若、何を言って」
「黙ってろ。――いいか? ここをこうして、構えて、引き金を引くだけだ」
こちらに向かって来ようとした流川さんを止めて、大きな手が銃の安全装置を外して、私にしっかりと握らせた。
「栄を見捨てた俺が憎いんだろう? なら、殺せばいい」
そう言って、禅さんが真顔で銃口を自分の方に向けさせる。
――この人はやっぱりおかしい。
「出来ないだろう? なら、誰かを守りたいとか、救いたいなんて考えは捨てろ」
「馬鹿にしないでください!」
パンッと大きな音がした。私のことを彼が鼻で笑った瞬間に引き金を引いてやったのだ。撃った弾は寝室の壁に穴を空けていた。
「あなたはおかしい! あなたは人間じゃありません!」
銃をベッドの上に捨て、私は目の前の俺様人間のジャケットを乱暴に掴んで自分の方に引き寄せた。
「私が、あなたを人間に戻します」
下からキッと私が睨み付けると、彼は「はっ、面白い」と笑った。たったの一言で片付けられて、また腹が立ってくる。するとそこに
「若、いい加減ちゃんと話をしてください。見ているこっちの心臓が保ちません」
そろそろと流川さんが私たちの近くにやってきて、控えめに言った。
「へ?」
もしかして……
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