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「――栄は死んでない。お前の騒ぎに乗じて裏から運び出した」
私の目を見つめながら禅さんが、けろっとした言い方をする。
一般人の私が通路で倒れていて、一時、パーティーの客や従業員がざわざわと騒ぎ、プチパニックになったところで難なく裏から運び出されていく栄さんの姿が、勝手に脳裏に再生された。
「で、全部が終わったあとにお前を病院から正式な手続きを経て、連れ出した。つまり、どちらかと言うと、助け出されたのはお前の方が後だ」
「私を騙したんですか!?」
――また……、まただ……! この人は、また私を騙して楽しんでいたんだ……!
とんでもなく間抜けな顔で固まってしまった。そして、私の顔を見てホッとしたのか、流川さんが部屋から去っていった。
「お前が勝手に勘違いしたんだろう? 幸薄貧乳なだけでなく脳味噌も貧相なのか?」
「なっ」
ふっ、と馬鹿にされるように笑われて、また頬を打ちたくなる。でも、私の右手は今、彼の手にそっと攫われて……
「さて、俺を打った罰を受けてもらおうか」
気が付けば、私はベッドに押し倒されていた。
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