般若の貴公子は敵の船に現れる

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「あの……」  整った顔が私のことを見下ろしている。ここは謝罪しなければいけないところだろうか? 謝罪の言葉を口にすれば、この人は私のことを許してくれるだろうか? 「まあ、罰は貯蓄しておくか」 「え?」  禅さんが意外にもあっさりと私を解放するものだから、気の抜けた声を出してしまった。 「なんだ?」 「い、いえ」  怪訝そうな瞳に見つめられて、私は慌てて目を逸らした。 「怪我人を襲う趣味はない。ゆっくり休め」  そう言いながら禅さんは電気を消して私の隣に横になった。 「スーツ、皺になりますよ?」 「元からお前の所為でクリーニング行きだ」 「くっ……」  たしかに、私の所為で禅さんのスーツは皺くちゃだ。 「すみませんでした」  小さく謝罪を口にしたら、大きな手に優しく抱き寄せられた。じんわりと温もりに包まれる。 「あいつの命なんて、お前の足元にも及ばない」  意識が落ちていく中、禅さんがそう呟いた気がした。
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