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――まさか、私より若いなんてことはないですよね? いや、いやいや、もしかして、そのまさか?
疲れた顔はしているけれど、肌の艶は悪くないし、寧ろ、女の私より綺麗な気がする。髪の毛も自然で綺麗な黒だし、意外とまつげが長くて……
「何故、そんなに見る? こっちを見るな。あとで会社のホームページでも見て自分で調べろ」
――はぁあ? 自分は私に歳を言えと強要しておいて、それはないでしょう? それに、こっちを見るなって、さっきと言ってることが違う気がする。
「じゃあ、いいです。別にそこまであなたに興味は無いので」
よく考えてみたら、禅さんの年齢なんて必死になって知りたい情報でもない。私はこの人とどうこうなりたいわけではないのだから。
そうだ、冷静になれ、私。
「三十四だ」
そのまま黙っているだろうと思ったのに、渋々といった様子で禅さんが数字を口にした。
「意外と……」
――素直で驚いた。
そう思ったけれど、正直に言うことは出来ず、何を間違ったのか、私は「年寄りなんですね」と言ってしまっていた。恐らく、無意識に仕返しをしようと思ってしまったのだろう。
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