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「はあ……、こんな幸薄貧乳ド処女に何の魅力があるんですか?」
呆れているのか、イライラを殺しているのか、禅さんが深い溜息を吐いて、木村さんに向かって静かに言った。
――言い方は優しいけど、言ってることがすこぶる酷い!
「駒田さんは魅力的だよ。俺は駒田さんの中身を見てる。そんなのも分からないなんて、あんたは一体、駒田さんの何なのさ?」
人をストーキングするのは良くないことだと思う。でも、木村さんの言っていることはごもっともである。――禅さん、あなたは私の何なんですか?
「言わなくても分かるでしょう? こういう関係だ」
「ん、っ」
急に禅さんが繋いでいない方の手で私の頬を包み、最初から深く唇を重ねてきた。相変わらず空気を求めて溺れる私を考慮してのことなのか、それとも木村さんに見せつけるためなのか、そのキスは蕩けそうなほどに優しかった。
「駒田さん、俺のこと、嫌いになったの?」
フワフワした頭に木村さんの声が入ってくる。でも、残念ながら、完全に身体から力が抜けてしまって答えられそうにない。
「ああ、まだいらっしゃったんですか」
私の唇を解放した禅さんが、嫌味ったらしく言った。表の人間に裏の顔がバレなくても、その言い方は性格の悪さが出てしまっているのでは、と思ってしまう。
「許せない……! 許せないよ、駒田さん!」
――わ、私!?
「その男と一緒に死んでよ」
ゆらゆらとこちらに向かってくる木村さんの手には、いつの間にか短いナイフが握られていた。
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