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「申し訳ありませんでした、だろう? 俺を面倒なことに巻き込みやがって」
やがって、ってちょっと言葉が汚いんですけど。そんなに怖い顔しなくても良くないですか? 別に頼んでないですし。
「私、自分でどうにかするって言ったじゃないですか。それを勝手に禅さんが――」
「俺は、自分の所有物を他人に触れられるのが嫌なんだよ」
「触れられていません」
さっき屁理屈を言われたお返しである。禅さんの視線が冷たくて鋭くて痛い。そして、無言というのが一番怖い。
「……ごめんなさい」
社会人の常識とか、そんなの知らない。でも、確かに、禅さんを危険なことに巻き込んだ。だから、これで、どうか許してください。
そう思って、ジッと禅さんの目を見て謝った。
「っ、部屋が燃えたということは片付ける必要が無くなったということだろう? さっさと帰るぞ」
――ん? なんだろう? 今、禅さん、くっ、っていう顔した?
気になったけれど、手を繋がれたまま帰路に向かわされそうになって、私は彼に「待ってください」と言った。
まだ、ここでやるべきことがある。
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