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「なんだ?」
「手を、すみません」
不機嫌そうな俺様には申し訳ないけれど、私はするりと彼の手から逃れた。諸々一段落して、禅さんの気が抜けていたのかもしれない。
「おい」
アパートの焼け跡に向かって走っていく私を追って、禅さんが歩いてくる。
「禅さんは来ないでください。汚れます」
私は手で禅さんを制止した。そして、自分の部屋があった一階部分に立って、燃えカスとなってしまった物たちの下や隙間を探る。
“あれ”は、きっと炎にも強いはずだ。
「やめろ、怪我するぞ?」
来ないで、と言ったのに禅さんが横に来て、私の腕を掴んで止めた。
「探させてください」
「待て。一体、何を探してる?」
彼の手を振り払って屈もうとしたら、また掴んで止められた。
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