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倒れてから、どのくらい時間が経ったのか分からない。目覚めると、私はベッドの上で横を向くように寝かされていて、誰かが後ろから腰をさすってくれていた。
「すみません、流川さ……」
きっとお母さ……流川さんだと思って、身体を捻って背後を見てみると、そこに居たのは禅さんだった。ベッド横の椅子に座って、私の腰をゆっくりさすってくれていたのだ。
「体調はどうだ?」
目が合うや否や、不機嫌そうな顔をされた。
――もしかして、呆れてる? 私がちゃんと言わなかったから?
「大丈夫です……」
なんとなく申し訳無くて、声が小さくなる。眠ったからか、頭やお腹の痛みはだいぶ和らいでいるけれど、気になることがたくさん見つかった。
――この感じ、多分、下着とか替えられてる……!?
「あの、禅さんじゃないですよね?」
「何がだ?」
全然気にしてないみたいな顔してるけど、私はとても気になる。だって色々と見たくないものまで見せたかもしれないし、いや、私が見せたくないものだけど。私たち、本当にそういう関係じゃないわけだし。
「大丈夫、安心して。私だから」
急に寝室の開かれていた扉から女性が入ってきて、私はポカンという顔をしてしまった。誰? という言葉が、もれなく頭を占拠している。
女性は長い茶髪で、それがエレガントにゆるく巻かれてて、服装も派手な表参道とかで売ってそうな赤いワンピースみたいなのを着ていて、取り敢えず、頭がついていけない。
「あ、私、禅の姉の梓です。ごめんね、突然。はい、これ、飲んで」
ベッド横にやって来た禅さんのお姉さん? が、私に薬と水の入ったコップを差し出した。
――禅さんにお姉さんなんて居たんだ? 私、何も知らなかった。お姉さんが居たから、私が生理だって気が付いたのかな?
「ありがとうございます。駒田都築です」
受け取りながら、お姉さんの顔を見てしまう。どうして、私を見てにやにやしてるんだろう?
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