テレワークdeハプニング

　アヤとリョウは旅先で知り合って付き合い始めた同性遠距離交際カップルだ。遠距離交際中の二人にとって、なぜ遠距離交際を余儀なくされているかと言えば、理由はたったひとつ。それぞれの持つ仕事だ。互いにいい大人なので、当然仕事に就いていて、それまで積み上げてきたキャリアや立場を、遠くに住んでいる人と付き合い始めたから、という理由でおいそれと投げ出すわけにはいかない。
　だが世の中がこんな状態の中、リョウの職場がテレワーク体勢に入った。
　開発企画の部署に属する彼、打ち合わせはテレビ会議で事足りるし、調べ物や個人的な作業も、家のパソコンで充分出来る。
　そうと決まれば、と向かった先はもちろん――

　アラームの音に起こされる。もっと寝ていたいなあ、と思いながら目をこじ開けると、真っ先に視界に入ってくる、愛しい人の寝顔。こんな幸せなことがあるだろうか。思わず顔が緩む。
　そう、リョウは在宅勤務になるやいなや、恋人・アヤの部屋に押しかけ、プチ同棲気分を味わっている。仕事がどこでも出来るのであれば、離れている必要などないのだから。

　まだまだ夢の中のアヤに軽くキスをして、後ろ髪を引かれながらも、ベッドから抜け出した。