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『すべては書くための礎』と割り切ると、どんな勉強もためになります。すべてに意味があるように思えます。世界が百八十度変わるとはまさにこのこと。曇っていた視界がパッと開けたようです。
そして、大学二年生。わたしはこのとき、おそらく運命と呼べる出会いを果たしました。
上橋菜穂子さんの『獣の奏者』
書店でたまたま見つけたこの作品に、わたしの心は釘付けになりました。
それまでも、自分の心の声は分かっていました。わたしは書きたいんです。しかし、どんな話を書きたいのかは分かっていませんでした。ようやくなんです。この作品でようやく納得しました。わたしが求めていたのはこれでした。
文字通り夢中になって読みふけりました。どこが魅力的だったのかと言うと、ファンタジーなのに、世界の息吹が聞こえるところです。頬を撫でて行く風の感触、山間から吹き込む朝日、雨上がりの土の匂い。そういったものが描写だけで湧き上がって来るんです。そこに世界があるんですよ。
それから、主人公エリンの類まれなる観察力。王獣リランが餌を食べない理由を突き止めたシーンなんかは魂が震えました。
世界、という表現をしましたが、もう少し正確に申し上げますと、そこにある現実をありありと描く手腕に惹かれました。生きた世界。厳しくも暖かくもある世界。
これを目指したいと、思うようになりました。
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