境界線

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境界線

私たちは身を寄せあって 外の世界からやってくる 悲しみや 不安や 怖さから 互いの心を護り合った 貴方だけ見て貴方の声だけ聞いて 何もかも忘れたいと思ったら 貴方が同じことを言葉に出して言った ここは私達しかいない 閉じた安全な楽園だと 世界は「私」と「貴方」で創られている そう思いたかった 幼なかったあの頃 互いのこころを護りきれると 私達は信じていた 護って欲しいと身を寄せ合った やがて月日が経ち 世界の仕組が解るようになった頃 外からやってくるものが 心を豊かにすることが解るようになった頃 私は閉じた二人きりの楽園に居るのが 寂しくなって 息苦しくなって 楽園から外に出た 何もかも眩しかった 暗いところから 急に明るい所へ出てきたばかりのように 醜いと思い込んでいたことほど 強くまばゆくて 驚きの連続だった 沢山の美しさが外の世界にはあった 二人だけの楽園には足りないものが 沢山外にはあった それを受け入れられない貴方と 受け入れた私とでは 少しずつこころが違ってきてしまって もう、その違いを無視はできなくて 自分の心も、「貴方」の心も 護らなくていいと 私は知った 護るために外からか来るものを 憎まなくていいと 私は知った 心の傷が癒えるのを拒否して ぎゅっと傷を握りしめて 痛くて哀しいと言う貴方と 二人だけで居るのが 辛くなった 行ってはだめだと 私の目を耳を塞ごうとする 貴方と二人きりで居るのが 辛くなった
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