かいぎ、かいぎ。

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 幽霊だのなんだの、という存在が実在するかどうかなんて正直俺にはわからない。なんといっても、俺も島田同様霊感なんてこれっぽっちもなく、人生で一度も幽霊の類を見たことのある人間ではないからだ。  写真やカメラごしだと、霊感がない人間にも幽霊が見えることはある、らしい。  ただ今のところ、島田のどの動画を見てもそれらしいものが映っていたことはない。そもそもこいつは動画を撮影するのがヘタクソなのか、毎回手振れも酷いしノイズも酷いしで結構残念な出来の動画ばかりをアップしてくるせいで全く参考にならないのだ(幽霊系の動画だけノイズったりしてくるようなら、一応霊障の可能性もあるのだろうが――やらかし料理動画とか、ペット系の動画さえも結構ノイズやブレがあるので、根本的にスキルがないだけだと思われる)。  だから俺も、別に幽霊を信じているわけではないし否定しているわけでもない。  ただ人が怖いとか、不快だと思うような動画を撮影して嬉々としてアップする神経が信じられないというだけのことだ。それに、呪いの存在が実在するかもしれないとなっ時、周囲の迷惑を顧みないし考えようともしない姿勢には到底賛同できないのである。自分のせいで、大切な誰かを不幸にするかもしれない。少しでもそんな考えがあるのならば、積極的に呪われかねないような行動などそうそう起こすはずがないと思うのだが。それが、己の承認欲求を満たすため、なんてくだらない理由なら尚更である。 「お前、人気取れるなら呪い殺されてもいいとか本気で思ってんの?そんなんで有名になって楽しい?」  コンビニ弁当の鮭をほぐしながらそう尋ねると、島田はあっけらかんと“楽しいに決まってるだろ”と返してきた。 「誰だって有名になりたいし、スターになりてーじゃん。平凡な会社で平凡な仕事して、ただ腐っていくだけなんて俺は嫌だしさ。撮影中に幽霊が現れて呪い殺されたりでもしたら、再生回数限界突破間違いなしだよな!」 「おい……」 「っていうのはまあ、冗談だけど。実際、人が死ぬ映像なんか生放送で流したら、運営からソッコーストップかけられるのが目に見えてるし。流石にアカウント停止は困るしー」  どこまでが冗談なのだろう。というか、自分が死ぬことよりもアカウント停止の方が困るのか、こいつは。  縁を切ろうと思うほどではないが、それでも理解するにはあまりにもかっとびすぎている。俺は何度目になるかもわからないため息をついたのだった。
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