かいぎ、かいぎ。

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――なんだこれ……これ、ただの、バグなのか?  段々と、プレゼンの内容に集中するどころではなくなっていた。恐らく、話している島田本人には何の異変も起きていないのだろう。声にノイズは混じっているが、それでもずっと彼は特に変わりなく話し続けているのだから。血や噴き出すことも肉がはみ出すこともない。ただただ、映像の中の彼の姿だけがぐにゃぐにゃに蹂躙され、踊り狂っているのみである。  それでも、異常は異常、だった。  だってそうだろう。映像に一部が不具合で歪むことはあるかもしれない。しかしそれならば、首がぐにゃりと真後ろを向いたり口が耳まで裂けたりなんてことになるだろうか。後ろのスクリーンなどにはなんの歪みもないのに、彼の姿だけが加工されたかのようにおかしくなるなんてことあるのだろうか。 ――これ……見えてるの、俺だけか?それとも……。  気が付いた。さっきから、他の参加者である上司たちが一言もしゃべっていないし、メモを取っている様子もない。一部の参加者は、明らかに顔色が良くない。 『その、すまないが……島田君』  やがて、まだ話し続けている島田を遮るようにして口を開いたのは係長だった。 『映像の調子が良くないみたいなんだ。何か、妙な設定を触ったりしていないかい?おかしな音も混じっているし。回線が重いのかな』 『え?……そうですか?なんだろ、今動かしてるのBEEMのソフトだけですし……皆さんの声とか映像はこっちからではばっちりなんですけど……』 『……そうか』  ああ、気づいているのは自分だけではない。今明らかに、数人が露骨に画面の中で視線を逸らした。それでも、これ以上何かを言う勇気がある者は一人もいなかったらしい。  誰も考えたくはなかったのだろう。  何か、とても恐ろしいことが起きているのかもしれない。そして島田本人は、それに全く気付いていないのかもしれない、なんてことは。
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