盤上のデニス

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盤上のデニス

「オンライン・ゲームなるものを作ってみたのです」  家臣の一人であるユーインがそう言い出した時、デニスは当然のように“おんらいんげーむとはなんぞ?”と首を傾げることになった。  異世界転移、とでも言うのだろうか。地球とかいう場所からの、異世界人がちらほらとこの世界にやってくるようになって早百年。そういえば、一番直近でこの世界にやってきた若者はゲームが大好きだと言っていたような気がする。魔法文明がない代わりに、科学が大きく発展しているというその世界では、本物そっくりの異空間で別人になって冒険するゲーム、なんてものが存在するという。  異世界人達がもたらしてくれた文化によって、この世界の科学もこの百年で飛躍的に進歩したと言っても過言ではない。特に“電気”が齎してくれる恩恵は非常に大きかった。少し前から、高所得者を中心にインターネットなるものの普及が始まったことも知っている。おんらいんげーむ、というものはそのインターネットとやらを使って行うものなのだろうか。 「国王なのに、不勉強で済まぬ。未だに、異世界人が齎した科学に関することなど、私にはまだまだわからないものばかりなのだ。おんらいんげーむというのは、先日の若者が教えてくれたものであろうか」 「左様でございます、王様!インターネットを使って、遠く離れた友人知人とも一緒にゲームを楽しむことができるのです。本物そっくりの世界を冒険したり、本人に逢わずともチェスの対戦やカードの対戦ができたり、パズルのようなものを楽しむこともできるのです」 「ふむ。どういう仕組みかわからないが、便利なものよな。民衆に広まってくれれば、大きな経済効果を生むやもしれぬ」 「今はまだ“パソコン”そのものの価格が非常に高いということもあって、貴族や中流階級の者の間でしか遊ぶことができませんが……工夫を重ねて、庶民の間でも広めていけたらと思います。楽しみは、階級や所得に関わらず皆で共有してこそですから」  そこまで考えてくれているのか。家臣のお手本のような返しに、デニスは嬉しくなる。
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