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この国は、階級によって貧富の差が激しい。それが、デニスの先代王である父が、各地に戦争を仕掛けるために庶民から兵を徴収したせいでもあることを自分はよく知っている。貴族たちは徴兵制度を免除されたが、それ以外の者達はそうではない。しかも、下の階級の者ほど激戦地に送られ、バタバタと死んでいったのである。働き手を次々奪われた民が困窮していくのも当然のことだっただろう。いくらこの国が、爆発的に増えた人口を養い切ることができず、慢性的に食糧不足に喘いでいるとしても――戦争でよその国から強引に奪って、あまつさえ自国の民をより苦しめる結果になるなんて本末転倒ではないか。
紆余曲折を経て、どうにか他国との和平を結び、戦争を終結させることができたのは――父が逝去し、デニスが王座についてからのことだった。
慢性的な食糧不足は未だ解決していないが、それでもいたずらに民を死なせるよりはマシな選択であるはずだとデニスは思っている。人と人が殺しあい、暴力で糧を奪い合う戦争ほど悲しいことはない。和平を結んだことで、少しずつながら他の国からの輸入品にも頼ることができるようになっている。食べ物を増産するべく、国家から支援を出して畑や工場も少しずつ増やしつつある。時間はかかるだろうが、荒れたこの国も少しずつ平和と繁栄の道を歩み始めていることをデニスは実感していた。
勿論、自分が生きている間に、民におなかいっぱいご飯を食べさせつつ、戦争も紛争も起こらない国にするのは難しいかもしれない。将来的には階級制度も撤廃したいと思っているが、貴族たちの反発もあるし今すぐにというわけにはいかないだろう。
ならば、今はまだ苦しみや悲しみや多い人々を、少しでも楽しませることのできる娯楽の存在は必要であるはずだ。こんな時なのに、ではなく。こんな時だからこそ、必要とされることもあるのである。
残念ながら科学のことはちっともわかっていないデニスだったが、優秀な部下たちはその限りではない。経済の発展や食糧不足解消とともに、娯楽についても真剣に考えてくれる彼らの姿勢がデニスは何より喜ばしいと感じるのだった。
「しかし、オンラインゲームか……そういえば、私もゲームの類はほとんどやったことがなかったな」
ぼそり、と呟けば。そうでしょうとも、とユーインは頷いた。
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