盤上のデニス

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「何せ、王様はいつもお忙しい方です。国のことに毎日頭を悩ませておいでであるため、ご自分の楽しみに時間を使うということを殆どなさったことがございません。……私達としてはぜひ、そんな王様に、私達が新しく作ったオンラインゲームのテストプレイヤーになっていただきたいのです」 「なんと、私にか?」 「そうです。……国王が楽しめないようなゲームを、民が楽しめるわけがありませんから。まずは王様直々に、ゲームが楽しいものであるということを実践していただくのが良いかと思うのです。いかがでしょう?」  それは一理あるのかもしれない。自分がゲームの面白さを民に喧伝すれば、パソコンの環境が整っている者達も信用してゲームを購入してくれそうだ。そうすれば経済も回るし、巡り巡ってこの国を豊かにすることにもつながるかもしれない。  問題は。 「興味はある。しかし、大丈夫だろうか。……私はその、機械音痴というやつなのだが」  自分は、教えられれば基本何でもすぐこなせた父とは違う。特に手先が不器用で、機械関連に関しては用語を聞いてもいまださっぱり覚えられない有様だ。先日はボタンを連打しすぎた結果、電子レンジなるものを壊してしまった。王様はやらなくていいって言ったじゃないですか!と絶叫した家臣には謝っても謝りきれない。家電というものは高価である。国のお金で買ったものを、次から次へと壊されては彼らもたまったものではないだろう。  今回のゲームとやらも、正直破壊してしまわない自信がないのだが。 「そうだろうと思いまして、王様には専用のものをご用意させていただきました。普通の機械よりもずっと扱いが易しく、かつゲームの世界に没頭していただけるものと思います」  こちらでございます、と。ユーインが他の家臣に持ってこさせたのは、ゴロゴロと動かせる台座に乗った何やら大きなパネルのようなものだった。裏に機械が接続されており、このパネルにパソコンの画面を投影することができるようになっているという。  そしてその機械の横には、ぐりぐりと動かせるハンドルと、それから拳銃のようなものが。 「それでは、ゲームをスタートさせますね」  ユーインが手元の端末から操作し、ゲームを起動させる。するとつるつるの大きな四角いパネルに、町の映像のようなものが映し出された。やがて集中線と共に画面真ん中に出現するのは“ジェット・ヒーロー!”という飾り文字だ。恐らくは、これがゲームのタイトルというものなのだろう。  黒い丸い台に、赤いボールがくっついた棒が突き立っている形状のハンドルをデニスに手渡し、ユーインは告げる。
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