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「このハンドルを動かすと、マウスポインター……ああ、そうですそうです。今タイトルの前を白い矢印が過りましたよね?それを動かすことができます。文字にカーソルを合わせ、赤い玉を握ることで選択することができます。タイトルの下に、ニューゲーム、という文字が出現しましたよね?そこに矢印を合わせてみてください」
「ふむ、こうか?それで赤い玉を握るのだな?」
「そうですそうです!あ、赤い玉は軽く握るだけでいいですからね。強く握りすぎると壊れてしまうかもしれませんので」
「む」
父譲りの怪力は自覚している。言われた通り力をセーブしながら、デニスは赤い玉を握りしめた。こういった小さなことであっても、父から受け継いでしまった血を自覚してちょっと嫌な気持ちになってしまう。気に食わない国に次から次へと戦争を仕掛け、庶民の犠牲を気にも止めない冷酷で暴力的な心だけは、絶対に受け継いでなるものかと思ってはいるけれど。どれほど反発しても、やっぱり自分は父の子なのだなと思うと悲しくなってしまうのだ。勿論、ユーインがそんなつもりで言ったわけではないことくらいわかってはいるけれど。
ニューゲーム、を押すと(ユーインいわく、クリックする、と言うらしい)四角い静止画像がいくつも並ぶ画面に出た。どうやらこのゲームは、この世界ではなく“地球”を舞台にしたものという想定らしい。異世界からやってきた若者が見せてくれた写真、それに映っていた景色とよく似ている。赤い三角形の塔のようなものは、東京タワーなるものではないだろうか。それからあの台形の形をした不思議な山。エアーズロック、と言っていた気がする。
「サムネイル……ああ、今映っている四角い写真たちのことです。これをクリックすることでゲームが始まります。左上から順番にやっていくのがおすすめです、難易度が低いので」
「どういう設定の、どういった内容のゲームなのだ?」
「この世界を侵略しようとする悪い人間たちを、ヒーローとなってやっつけるというゲームです。そこに黒い銃がありますよね?画面に敵の兵隊が出てきたら、その銃の引き金を引いて撃ってください。射撃のゲーム……シューティングゲームというものです。勿論本物の銃ではないので、弾が実際に出ることはありませんからご安心を。今はまだ開発途中なので使えませんが、最終的には遠く離れたところに住んでらっしゃるプレイヤーとも一緒に戦闘を楽しみ、スコアを競い合うことができるようにしたいと思っています」
「それは……楽しそうではある、が」
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