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なるほど、何故本物そっくりの銃型の操作機器が用意されたのか理解した。争い事が大嫌いなデニスではあるが、昔から戦闘の技術に関しては父直々にみっちりと仕込まれているのである。特に、射撃に関してはあの父にも天才と褒めたたえられるほどの腕前だった。人を傷つける手段なんぞで才能を発揮して何になるんだろう、とかつての自分は酷く落ち込んだものであるが。
「王様。これはゲームです。本当に人を撃つわけではありません」
自分が何に悩んでいるのかわかったのだろう。ユーインはデニスの手を握り、説得するように告げた。
「争いをしたくない、人を傷つけたくない王様の優しい心を、我ら一同理解しております。ですが、その素晴らしい腕前を誰にも披露する機会もない、生かす手段もないというのはあまりにも寂しいことだと思っておりました。ゲームの中で自分が楽しみ、同時に人を楽しませるために使うというのはどうでしょう?きっと王様も、それならばと楽しんでいただけるのではないかと考えたのでございますが……」
「ユーイン……」
こんな特注のゲーム機を作るのに、一体どれほど血のにじむ努力をしたのか。それも自分のために。少々お金をかけすぎているような気がしないでもないが、純粋に彼らの気遣いがデニスは嬉しくてならなかった。
確かにゲームでならば、人を傷つける心配もない。射撃の腕を生かしても、実際の人間を撃つわけでもない。何も心配せず、能力を生かすこともできるだろう。
「恩に着るぞ、ユーインよ」
そして、デニスは頷くと、一番左上のサムネイルをクリックしたのだった。
始まったのは、まるで実写のようにリアルな映像だった。迷彩服を着た男達が、こちらに銃を向けて攻撃してくる。なるほど、彼らを攻撃しろということらしい。
ファイト!の文字が表示されるとともに、デニスは右手に構えた銃を構え、引き金を引いたのだった。
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