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 ねえ、憶えてる?  私は憶えてるよ。穏やかな風の匂い、箱の中から見上げた青い空と、電柱と、のぞき込んできたお日様みたいな笑顔。 「おかあさぁん、ねこ!」  差し出された手にしがみつくと、私はまだ爪を引っ込めることができなかったから、柔らかい肌を白くて細いひっかき傷だらけにしてしまった。  なのにそのお日様みたいな男の子は気にも止めないで、「わあ、かわいい」と私を抱き上げて、お母さんが飼うことを反対しても、頑として離さずにいてくれた。  あの時、私には家族ができた。お父さんと、お母さんと、大事な大事な私の草太。
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