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 高校生になると、グループ課題だとかで家に何人かの友達を連れてきたよね。その内の一人「田中さん」が、中学からの草太の片思いの相手。  夜中まで受験勉強を頑張っていたのは彼女と同じ高校に進学したかったからだって知ってる。なんだって分かっちゃうんだよ。お姉ちゃんだからね。……それと、草太がよく寝言で名前を呟いていたからね。  一度会いたいと思っていたんだ。田中里緒さん。  子犬のようにキャンキャンとまとわりつくあざとい女だったら、威嚇して、引っ掻いて、追い帰してやろうと手ぐすね引いていたんだ。姉としてはさ、見定めてやんなきゃでしょ?  やってきた田中さんは、姿勢が良くて、手足がしなやかで、無駄な動きや表情の無い、つんと澄ました女の子だった。でも、たまに見せる笑顔は素直で純粋で。その上、誰にも知られないように机の下でこっそり指を動かして私の気を引いたりするものだから、狡いと思いつつ、気付いたら、少しくらいなら膝に乗ってあげても良いかななんて思ってた。  なぁんだ、草太の奴、見る目あるじゃんって、お姉ちゃん感慨深かったよ。
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