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 草太が来る週末まで待ってた。  撫でてくれる手は、いつかの小さな手ではなくて、私の頭をすっぽり包む。  「来てくれてありがとう」って鳴いた。  頬ずりして、喉を鳴らした。  思い、伝わったかな?  もう目も耳もなにもかにも感覚が無いから、立っているのか寝ているのか、声が出ているのか息が漏れてるだけなのか、分からなくて。でも、草太の手と声と足音は分かる。本当は最後の力で玄関まで迎えに出たかったけど、もう瞼すら重くて。お姉ちゃんなのに、ごめんね。 「次は僕の娘に生まれてきてよ。また可愛がりたい。育てたい。可愛い可愛い僕の」  聞き捨てならない一語に抗議の声を上げたら、「僕も大好きだよ」だって。ああ、もう、本当に伝わらない!  ……私も大好きだったよ。お姉ちゃんは、草太のこと、ずっとずっと大好き。
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