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「僕も、隆臣さんが好きです」
間髪入れずに答えた依歩の言葉に、今度は隆臣が目を瞠る。
「俺の『好き』の意味、わかってるのか?」
疑惑の目を向けてくる隆臣の頬を、そっと両手で包み込む。少し腰を浮かせて、小鳥が啄むようなキスを落とした。
「これが、僕の『好き』の気持ちです」
「これって……」
「たぶん、最初から隆臣さんに惹かれていたんです。緊張していたのは怖いからじゃない。隆臣さんに触られたらドキドキして、笑顔を見たら胸がきゅって痛くなって、隆臣さんの役に立ちたい、支えになりたいって思ってました。小さい『好き』から探してたのに、こんな大きな『好き』を見つけちゃって……、責任取ってください」
隆臣が嬉しそうに笑う。それにつられて依歩も笑った。そこに、ぐぎゅるるるう……という盛大なお腹の音まで加わり、しばらく二人で笑っていた。
「安心したら、お腹すきました」
「ちゃんと、栄養摂らないとな」
二人でダイニングに向かって、座ってろと言われたのに座っていられずに、二人で依歩が作り置きしていた料理や、隆臣が作ってくれたお粥などをテーブルに並べた。
食事が終わると、「泊っていけ」という隆臣に寝間着を渡され浴室の戸を閉められた。戸惑う隙も与えられず、依歩は初めて、これまで掃除しかしたことがなかった浴室を使った。隆臣の寝間着は大きくて、何重にも折り返す。新品だと渡された未開封の下着は、依歩の細い腰ではすとんと落ちてしまうほど緩く、パジャマのズボンで押さえて穿いた。全てが新鮮で、こそばゆく、ずっと頬の辺りが熱い。
入浴後、ほかほかと温まった体で、所在なさげにソファーに座っていると、隆臣が驚いた顔を見せた。しっとりと濡れた髪とスウェットの上下。朝、走った後にシャワーを浴びた隆臣の姿と同じなのに、夜二人きりの部屋で見ると、隆臣の男らしい色気に釘付けになる。そんな依歩の心境を知らない隆臣は、コンパスの長い脚で近づいてきた。
「まだ寝てなかったのか。ベッドで早く休まないとダメだろ」
「…………」
無言でいる依歩に何を思ったのか、「俺はソファーで寝るから」と付け加える。
「…………一緒に、寝ちゃだめですか」
依歩の言葉に、隆臣の大きな肩がびくりと揺れた。大胆なことを言っているのはわかっている。それでも、今は隆臣のそばにいたかった。
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