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御堂かなた、という後輩転校生のことが気になり、ネットで調べてみることにした。
小学生で子役デビュー。出演作のドラマや映画の中には、俺も聞いたことのあるような有名タイトルもちらほら見つけた。
中学生に上がってすぐ、ティーンズ向けのファッション雑誌のモデルを始めたらしい。
モデルから俳優はよく聞くけど、逆は珍しいなとふと思う。いや、俺が無知なだけでよくある事なのかな?
モデル活動と並行して、役者としての活躍ぶりも衰えない。この年齢にして主演映画やドラマもあるらしく、本当に一流芸能人なのだと認識した。
「先月、俳優業の活動休止を発表……か」
この学園に来たんじゃ、まぁそれも当然だろう。寮生活だから、連日行われるような稽古や撮影には入れないだろうし。
「……なんでそんなの調べてるの?依ちゃん」
にゅ、と真後ろから首を突き出してきたのは、……紅くん、もしくは藍くん。
正面から髪型を見ないと、どっちか分からない。
「今学期からの転校生みたいだよ」
そう言えば、「うん……」とだけ返ってくる。
これは……知ってた口ぶりだな。
生徒会では、多分俺だけが知らなかったんだろう。だからと言って拗ねるほど子供でもないけど、胸の内がもやつく。
そういえば少し前、双子の会話の中にカナちゃんとかいう名前が出てきたような。
「えっと……先輩はもう会ってるカンジ?」
「うん」
「えー!いいな、俺も会ってみたいのにタイミングが合わなくってさ。今度紹介してよ」
「やだ」
思わず聞き流しかけるほどに、当然のように彼はそう答えた。
「な……っ!いいじゃん!」
「やだよぉ」
「なんで!?」
「うーん……」
絶ッ対今言い訳考えてるよね?その微妙な間は一体何だ……?
「好きになっちゃった、的な」
「はい?」
「そ。好きなの、カナちゃんのことが。多分」
息を飲み、それから返答に困って数秒の沈黙が流れた。
「だから駄目なの」
「ごめんなさい、よく分からないです」
「だって、もし紹介して依ちゃんも好きになっちゃったら……」
「ありえないから!」
「でも、こーんな格好いいんだよ?」
後ろから腕を伸ばしてきた先輩が、俺のスマホを勝手にいじって御堂かなたの画像が表示された。
確かに格好いいけど。
好きになるわけないじゃん、男だよ?
……なんて、男である転校生が好きなんだと今しがた打ち明けた先輩に言えるはずもなく、「分かりました」と引き下がるしかなかった。
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