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宿に戻り、部屋へと入る。そこにはラタとリラがいて、何やら会話していたようだった。真ん中の狭いスペースで、向かい合って座り込んでいる。
「お帰りなさい。今、二人でストリートチルドレンの話をしてたんですよ」
「君たちは随分レベルの高い話をするんだな」
「リラ君が気になるみたいで」
「可哀想だなぁって。お家がなかったらどうやって暮らすのかなって……」
リラの表情は悲しげで、純粋に哀れんでいるのだと分かった。無垢さが小さく心を刺激する。これは事実を知らない方がーー。
「で、今答えてたんですけど、吃驚させたみたいです」
「そりゃ驚くだろ。てか話したのか」
対照的にラタは、躊躇なく話してしまったらしい。
都市でのストリートチルドレンの末路は、基本的に餓死か殺されるかの二択しかない。その情報だけで、生命維持の過酷さは計り知れるはずだ。
「何とかして助けてあげたいな。だって今のままも大変だろうし、もしクロオニに連れてかれちゃったら、もっと嫌な暮らしになるんでしょ?」
「でも、そういう子っていっぱいいるからねー難しいだろうねー」
「誰かが国ごと変えない限りはな」
エオルの中、都市の変化が想像される。だが現実感がなく、すぐに消えてしまった。しかし、リラは違ったらしい。
「僕、大きくなったら偉い人になって助けるよ!」
一片の冗談もない真剣な眼差しを前に、ただ頭だけをくしゃくしゃと撫でた。ラタはと言うと『期待してるよー』と軽い口を叩いていた為、少し睨んでやった。
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