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「慎一…」
俺だけがゲームのキャラを動かしているだけで、他の3人は動かない。
そして、Yasu.がまた俺の名前を本名で呼ぶ。
「お前が見たの…夢なんかじゃない」
「何だよ、悪かった。俺の夢の話はもう忘れてくれ」
俺はYasu.が夢の話を引っ張っていた事に罪悪感が生まれ、すぐに謝った。
「夢じゃないんだよ、慎一」
今度はDog67が震えた声で言い出した。
「何だよ…」
自分が最初に雰囲気を悪くしたとはいえ、皆で余計に悪くすることはないだろと思い、少し腹立たしい気持ちになった。
「夢じゃないなら、何で今こうやって繋がってるんだ?ありえないだろ。夢じゃないなら、死んだヤツらとどうやって繋がるんだよ!」
俺は少しキレ気味に言った。
普段あまり怒らない俺だが、からかいのしつこさに本当にキレてしまいそうだった。
「死んだ人間と…どうやって、繋がってるんだろうな」
「は?」
Yasu.がまだ続けている事に俺は『は?』しか返せない。
この半年、毎日楽しくオンラインで繋がっていたが、その繋がりの線を抜いてしまいそうな気分だった。
その時だった…
「慎一…死んだなんて、嘘だろ?…俺が、あの時ゴミの事言わなきゃ、捨てに行かずに、あんな事に、ならなかった…」
Mookinが、泣きながら話しているような声でそう言った。
「何…言って…」
俺はMookinの話に少し動揺したが、じゃあどうやって今4人で話せているのかという事と、俺が見た夢は、死んだのは俺じゃなかった。
矛盾した事ばかりだったが、何故か心がざわつき始める。
そして、そのざわつきは全身へと広がって行く。
「俺…」
俺は握っていたコントローラーの重量を感じなくなっている事に気付いた。
目の前のモニターが、ゲーム画面から深夜のコンビニの外へと変わる。
ゲームのように自分の後ろ姿が手前にあった。
ゴミ置き場のコンテナの蓋を閉めたゲーム画面の俺は、コンビニの前で楽しそうに話している3人を見ていた。
そして…
眩しい光と、連続したクラクションの音、タイヤの擦れる嫌な音が、自分へと向かって来た。
逃げるという行動をする間もなく、俺は光に包まれた。
『慎一、どこに…いるんだ?』
俺が最後に聞いた声は、大型トラックとコンテナの間に挟まれ、見えなくなった俺を探すYasu.の声だった。
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