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「よっしゃ!狩猟成功!」
「Yasu.、俺の分まで採るな!」
「さらば、Mookin」
「くっそ!飛ばすなよ!」
「あ、やべぇ、そろそろバイトの時間だ。んじゃ、俺抜ける。Yasu.、Mookin、Dog67、また明日な~」
「Vanpu、明日は7時だから遅刻すんなよ」
「わかった。遅刻したやつは…」
『封印の羽根没収!』
「だな。じゃあ、お疲れ~」
『プツリ』とマイクを切り、胸の辺りにあるコードを下へ引っ張り、耳の穴に差したイヤホンを勢いよく抜いた。
黒のコントローラーの中央にある他のボタンより少し突起の薄いボタンを押すと、モニターの画面中央に『ログアウトしますか』の表示が出る。
「おっと」
俺は今日の報酬の成果をSNSに上げる為の写真を撮り忘れていた事に気付き、ログアウト画面から元に戻した。
同じ大学に通う俺達4人は、ほぼ毎日オンラインで繋がってゲームをしている。
大学に通い出してすぐの頃、休み時間にゲーム雑誌を読んでいると、同じゲーム雑誌を持った男に声をかけられた。
それが、Yasu.だ。
Yasu.は俺が見ていたページを見て、そのゲームに興味があるのかと聞いてきた。
俺は興味があるどころか、そのゲームは初期の頃からハマっていて、最新作の3作目ではオンラインで仲間と一緒にモンスターを狩れるようになった事に歓喜していたが、オンラインで知らない人同士のチームへ参加すると、狩猟に参加しないで他の人が狩猟した報酬だけを持っていく人や、失敗すると酷く悪口を言われたりする人に出会す事があり、オンラインでゲームに参加をするのが嫌になり始めていた。
俺はYasu.にその事を話すと、Yasu.は嬉しそうに「俺と一緒にやらないか?」と誘ってくれた。
大学でボッチだった俺は、ゲームを一緒にやる事で友達になれるかもと思い、2度返事でOKした。
それからすぐに同じ大学の2人、MookinとDog67が仲間になり、学校が終わって家に帰ると、毎日4人でオンラインで一緒にゲームをするようになった。
同じゲームが好きだからなのか、性格も合い、幼い頃から仲間だった気さえした。
お互いの名前も、学校内では本名で呼び合うが、オンラインへ入るとニックネームであるYasu.、Mookin、Dog67と、呼び合う。
ちなみに、俺は畑中慎一。ニックネームはVanpuだ。
「うわ!やべぇ」
アルバイトの準備をしてから報酬の写真を撮ってSNSに上げようとしていたら、知らない間に時間が経過していて、今出ないと遅刻しそうになった。
俺は帰ってから写真を撮る為に、そのままゲーム機本体の電源を落とさずモニターの電源だけ落として急いでアルバイトへ向かう事にした。
「あー寒っみい」
外に出た瞬間、上着に腕を通すのが面倒で着なかった事を後悔するが、それもほぼ毎日の事なので後悔も毎日のルーティーンになっている。
俺は体を暖めるのと遅刻しないという2つの目的の為に、深夜のアルバイト先のコンビニへルーティーン通りに走った。
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