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第四話 少女との出会い
次の日、学校に行くのを止めて家の近くの公園に行った。そしてブランコに下を向いて乗った。
「お兄ちゃん、学校はどうしたの。もしかして不良?」
気がつくと、知らない少女が俺の顔をのぞき込んできいてきた。たぶん、自分より、一つ年下の九歳。初めは無視をしていたがあまりにもしつこくきいてきたものだから不機嫌そうに言ってみた。
「不良じゃないよ。君こそこんな時間に何やってるの?」
少女は、隣のブランコに乗り大きくこぎ出して答えた。
「みいちゃんはね、パパとお兄ちゃんから逃げてきたの。そんなことより、みいちゃんの名前は、美夜だよ。美夜だから、みゃあって呼ばれてるの。お兄ちゃんは?」
「僕は、和樹。滝沢和樹」
別に答えなくても良いのになぜか少女に答えていた。少女はきいてないのに話しを続けた。
「みいちゃんね、パパ達のこと、殺しちゃいたいぐらいに嫌いなの。もう、あんな人達は死んでくれないかな。和樹お兄ちゃん、この世界って残酷だね」
少女は、その年で何もかもを悟ったかのように言葉を並べた。なぜ、そんなに嫌いなのとかはきかなかった。当時の俺には、他人の事なんてどうでも良いことだったんだ。だって自分のことで精一杯だったから。
「残酷だね」
ただ俺は下を向いて地面をみたままそう言った。
「そうだよね、ありがとう。お兄ちゃん、なんかね、話したら気分が良くなったよ。じゃあ、みいちゃん帰るね。ばいばい」
少女はそう言うと元気にブランコを降りて行ってしまった。数時間後、学校が終わる頃を見はからって家に帰った。
「ただいま」
なるべく明るく振る舞って家に入る。そしてそれ以上は何も言わずに部屋に入る。
何も考えたくなくて、ベッドに転がり込み枕に顔を埋めた。そしたらなぜか泣きたいという衝動に駆られてしまう。だけど泣かずに我慢した。
今、涙を流してしまったら止まらなくなってしまう。だめだ、今泣いちゃだめだ。
そう思い込んで我慢するしかなかった。
ー続くー
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