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両足を床につけて立ちあがろうとした時だった。
ふと感じる手首に絡まる暖かい感触。
「…!」
ギョッとして振り返ろうとすればその前に容赦なく引き寄せられて。
それが隣で眠っていた人の仕業であると気がついた頃にはもう遅い。
「…なんで…」
マヌケに呟けば抜け出しかけたベッドにまた簡単に引き込まれる。
されるがままになってマットレスに押し倒されればシトラスの香りがいっぱいに香って。
なにがなんだかわからなくなった私の視界にそのうち入ってくるのはにっこりと笑っている唇。
そんな、こと…
あるわけない。
だってこの人は絶対起きない…
でも
唇のその上に、視線をずらして私は今度こそ固まった。
「もういっかい呼んで。」
「…!」
開くはずのないサファイア色が瞳をいっぱいに満たした。
ーーーFINーーー
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