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カバンを手に持ち、事務所のドアノブを回した時、背中に振動を感じた。
「嫌、別れたくない」
背中に抱きついた里美の言葉が信じられない。
「そうやって、何人騙してきたの?
もしかして、僕が織田組の関係者だから利用しようとした訳?」
時に人は自分の過ちさえ気づかない事がある。
「離れてくれる?」
「嫌、別れたくないの」
そんなやり取りをしていると、ドアが此方側に押されたのが分かった。
「奏」
僕の名を呼ぶ声は健成さんの声。
スッと離れた美里。
だから、僕は健成さんが入ってきやすい様に横にずれた。
入って来た健成さんの顔を見て驚いた顔をした美里。
「なんでてめぇが居んだ?」
床を這う様な低音ボイス。
それに驚いたのかバックを手にした美里は、急ぐ様に事務所から出て行った。
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