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「もう、もう解放してくれ」
目の前の男が涙目で懇願する。
俺は冷たい目でそれを見ていた。
「頼む。なぁ、頼むからもう許してくれ」
「じゃあ聞くが、お前はそう言われて許してあげたのか?あっ?解放してあげたのか?」
俺は指輪を外す。
「謝る。謝るから。頼むそれだけは…」
大の大人が鼻水を垂らしながら涙ながらに懇願してくる絵面は見事なものだ。
「謝ってももう戻ってこないんだよ」
俺は外した指輪をライターで炙った。鈍色をしていた指輪は赤く輝き出した。
目の前の男はその指輪に目を奪われ小刻みに震えていた。
必死に抵抗するも、鉄の椅子に括り付けられた男の体はびくともしない。頭も固定されているので左右に逃げることもできない。
「今日はどこにしようか」
俺は真っ赤に輝いている指輪を男の顔の前に持っていく。視線は指輪に向けられつつ、なんとか逃れようと椅子に体を押しつけている。
俺は一歩下がって全身をみわました。男はブリーフ一丁の恥ずかしい格好の状態で、鉄の椅子に括り付けられている。その露出した部分の至る所に『命』という烙印が押されていた。全て俺がしたことだ。この指輪で烙印を押していった。
左足の甲に烙印がないことがわかった。ふくらはぎや太ももには押してあるが、甲にはなかった。
俺はしゃがみ込んだ。男を見上げるように見るとぷるぷると震えていた。足もまた固定されていて動かせない。
「今日はここな」
俺は言い終わるとすぐに指輪を押し付けた。耳をつんざく悲鳴と共に肉の焼ける臭いが立ち込めた。何度やっても好きになれない臭いだった。焼き肉は大好きだったが、男が来てからは好んで行かなくなってしまった。
全身の筋肉を緊張させ儀式に耐える男は、足の甲に『命』が吹き込まれると同時に失神した。
男の体力はいつまで持つだろうか。
俺は部屋を出ていった。
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