6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
エピローグ
あれから何人もの生徒を送り出してきた。
私の中で、彼ほど印象に残っている生徒はいない。
デスクの引き出しにひっそりと入れられているピアス。あの日、あの時の空気も一緒に入れられている。私と彼が約束したあの日のままがこの袋の中に閉じ込められている。
「先生これあげる」
「俺、決めたんだ」
「これから左官職人になる。んで、日本一になるんだ」
彼と約束をした。
一人前になったら報告も兼ねて取りに来ると。
まだ彼は来ない。
小袋に触れる私の手にも年齢が出てきた。
それでも待つ。
それが私と虎太郎の約束だから。
最初のコメントを投稿しよう!