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「授業に戻るわよ」
一度投げた彼の制服を再び摘んだ。
「わかったよ。自分で歩いて行くから制服を持つな」
「先生に命令口調を使うな。何回言ったらわかるの」
「はいはい。申し訳ござんした。泉先生」
キーンコーンカーンコーン
終了のチャイムが鳴った。
校舎の方から沢山の視線が向けられていた。虎太郎と富美子の騒動は、学校内では恒例の行事となっていた。
友達も寄りつかないような虎太郎が富美子に従うさまが見ていて面白いらしい。
「あーあ、チャイム鳴っちゃったね。いずみん、俺の事なんか放っておいた方がいいんじゃない?クラスメイトは他にいっぱいいるんだし」
「あんただけ放っておくわけにいかないでしょ。私が持ってるクラスの生徒なんだから」
「いずみんも運が悪いよな。俺の担任になって」
「それはあんた次第でいくらでも変わるわ」
話を最後まで聞かないうちに虎太郎は校舎に向かって走り出した。
「ちょっとどこ行くの」
虎太郎は捕まえてみろと言わんばかりに、富美子を挑発して昇降口に消えていった。
「待ちなさい」
既に体力の限界の富美子は走って追いかけることができなかった。
それを上の階の生徒達が笑っていた。
「見せもんじゃないわよ。あんた達教室の中に入りなさい」
「先生、今は休み時間でーす」
生徒の一人が答えた。
「くそっ」
小さく毒づきながら富美子は昇降口に向かった。
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