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報告
「泉先生聞きました?」
朝出勤すると同僚の先生に声をかけられた。
「なんの話ですか?」
「この間泉先生のところに来てた神林君」
虎太郎が富美子のところに来たのは一週間前だ。
「彼がどうしたんですか?」
「亡くなったみたいですよ」
「えっ…?」
言葉を失った。冗談としか思えなかった。
「なんかバイクで事故っちゃったみたいですよ。無免許運転だったって話聞きました」
その後も同僚の先生は何かを話していたが耳に入ってこなかった。
名簿を取り出し彼の実家に電話をかけた。
沈んだ声で応対したのは彼の母親だった。
仕事あがりに彼の家に行くと、作業着を着て満面の笑顔の彼の写真が仏壇に添えられていた。
「職人さんの作業着が嬉しかったみたいで、最近撮ったものです」
母親はそう教えてくれた。
数ヶ月前までの彼とは違う希望に満ち溢れた顔が富美子に笑いかけていた。
涙が止まらなかった。
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