第1話 朱華の悩み

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第1話 朱華の悩み

「え!? まだキスもしてないの!?」  驚くリサのリアクションの大きさに、朱華(しゅか)は慌てて周囲に視線を巡らせた。 「ちょっ、声でけぇって、リサ!」  ハンバーガーショップのボックス席には、朱華、マユ、リサ、サエのいつもの友人メンツが、夏休みの近況報告がてらに集まっていた。話題の発端は、リサからの「ぶっちゃけ、時任(ときとう)先輩とどこまで進んでるの?」という冷やかしからだった。  朱華の返答に仰天するリサとは正反対に、サエが平静に突っ込んだ。 「てか、告白の返事がキスだったとか言ってなかった?」 「あれは……頬なんだよ」  言われて、その時の記憶が朱華の脳裏に再生される。真っ白な病室。ベッドから半身を起こした彼に、腕を掴まれて、引き留められた。  ――『俺の幸せは、もう朱華ちゃん無しでは考えられないんだけど』  真剣な瞳。朝焼けと同じ、綺麗なヘーゼルに。映り込む自分の顔が、徐々に近付いて。  ――『責任、取ってくれる?』  わぁあああああっ!!  突如襲った思い出し照れの波に、朱華は内心叫びながら、悶絶する羽目になった。
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