14人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
第1話 朱華の悩み
「え!? まだキスもしてないの!?」
驚くリサのリアクションの大きさに、朱華は慌てて周囲に視線を巡らせた。
「ちょっ、声でけぇって、リサ!」
ハンバーガーショップのボックス席には、朱華、マユ、リサ、サエのいつもの友人メンツが、夏休みの近況報告がてらに集まっていた。話題の発端は、リサからの「ぶっちゃけ、時任先輩とどこまで進んでるの?」という冷やかしからだった。
朱華の返答に仰天するリサとは正反対に、サエが平静に突っ込んだ。
「てか、告白の返事がキスだったとか言ってなかった?」
「あれは……頬なんだよ」
言われて、その時の記憶が朱華の脳裏に再生される。真っ白な病室。ベッドから半身を起こした彼に、腕を掴まれて、引き留められた。
――『俺の幸せは、もう朱華ちゃん無しでは考えられないんだけど』
真剣な瞳。朝焼けと同じ、綺麗なヘーゼルに。映り込む自分の顔が、徐々に近付いて。
――『責任、取ってくれる?』
わぁあああああっ!!
突如襲った思い出し照れの波に、朱華は内心叫びながら、悶絶する羽目になった。
最初のコメントを投稿しよう!