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8-1 鬼ぃさん、血の味がする夢でした。
「花っ、しっかりして……ッ」
傷だらけのミサちゃんが叫ぶ。その後ろでは、尻餅をついたマチコが目を見開いてこちらを見つめている。
ミサちゃん、マチコ。
そう、呼ぼうとしても声が出ない。
「花っ、大丈夫だ。おまえはッ」
叫んだのは、家守だった。こっちに手を伸ばしてくるのに、なんでかそれが届かなくて。
「おまえは--ッ」
目の前が、唐突に紅く染まる。
ミサちゃんも、マチコもいなくなって。紅い闇の中でぽつんと佇んでいると、後ろからまた「おまえは」と呼びかけられた。
(家守……?)
振り返ると、そこにいたのは家守ではなく、福庭くんで。紅く濡れた身体でこちらを指差してくる福庭くんは、にぃっと不気味に笑ってみせた。
「おまえは、化け物じゃろ?」
※※※
「痛--っ」
ズキンと強い痛みに身体を起こすと、布団の中だった。
「夢……かぁ」
傷だらけのミサちゃんと、怯えるマチコ。必死な顔の家守に、わたしを「化け物」と呼ぶ、真っ赤な姿の福庭くん。
(変な……夢)
断片的すぎて、わけがわからないけれど。なんだか変に鮮やかと言うか、印象的な夢ではあった。
「いででで……あー。寝ぼけて口の中噛んだんだな、これ……」
おかげで、口の中がズキズキとする。これじゃあ、朝ごはんも美味しく食べられないぞ。
「あーぁ。口の中が、血の味と匂いでやだなぁ。これじゃ……」
呟きかけて、止める。それでも頭の中では、思考が言葉を紡ぎ続けていた。
--これじゃ、夢の中と一緒じゃん 。
と。
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