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-月-
鳩辺 弥虎(はとべ みとら)
早村 潤晴(はやむら じゅんせい)
早村潤晴はブラコンである。弟の灥晴(しゅんせい)は本当に可愛くて、目とか耳とかどこに入れたって多分痛くない。そもそも年下が好きだ、とは分かっていた。ただ男のことまで好きになるとは予想外。目どころか、尻に入れることになるなんて予想外なんてモンじゃない。最近も驚くこと盛りだくさんだ。
初めは、可愛いと思っていただけだった。抱きたいランキング1位なだけ、あるなと。時々廊下ですれ違ったりなんかして、全く可愛い顔してんな〜なんて。
「潤てめェ、ワザとこっち通ってんだろ?遠回りなんだよ。見てェんなら一人で行け」
「いやいやいや、それはなんかよぉ」
可愛さを愛でたくて、顔を拝みたくて、目の保養、とか言って。この時から実は誤魔化していたのかもしれない。自分の、気持ちを。
確実に惚れた、と認めたのはある瞬間だ。いつもニコニコ笑って、誰にでも愛嬌を振りまいて、それが、崩れた瞬間。あの、一瞬。顔つきが変わった。つまらなそうで、低俗だなとでも言いたげな、全てを見下す、みてえな。最高だと思った。本性を見たのだとすぐに分かった。欲しい、と、心から感じた。
「えっと…お話って、なんでしょうか?」
意を決して屋上に呼び出した。こっちは心臓がバクバク波打って困っているというのに、相変わらず取り繕った綺麗な顔だ。
「あの、な。急に怖ぇと思うけど、俺、あんたが…あ、あんたの、こと…」
次の言葉が出てこない。たった三文字だろうに。なんで言えない。ほら、不思議そうな顔をしている。
「好〜き。ですか?俺のこと、好きになりました?先輩」
目を見開いた。言われちまった。先に。なんというみっともなさ。
「いや、あの…」
「あり?わざわざ屋上にまで呼び出して、違うってことは無いでしょう」
「違う。俺はあんたの、顔とかじゃなくて…いやそれも好きだがな、俺は本当のあんたが好きなんだ、たぶん」
「え?先輩、ドMなんですか?」
「へ?」
「あーそういうことなら大歓迎ですよ。最近俺ん中で流行ってるアソビがありましてね〜俺のこと抱きたいって言い寄って来た男達を片っ端から掘るってヤツなんですけど。これが面白くて…!先輩も、俺に掘られたいんですか?でなきゃ、本当の俺とか…軽々しく言うのやめてほしいです。…失礼します」
ぷい、と後ろを向いて言ってしまう。言いたいことが何も言えなかった。いや、言えよ。なんで過去形だ?今、言えよ。
「それでも良い!」
「はい?」
「お前がドSでタチってのは分かった。じゃあそれで良い。俺はお前の目に惚れた。時々見せる、蔑むみてぇな目、に。あれは違うのか?本当のお前とは」
「先輩…それ、やっぱドMじゃないですか」
めでたい。実にめでたい。めでたく付き合うことになった。よってたくさん愛でたい。
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