カウントダウン

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電車のドアが開くと、僅かな時間包まれていた温かな空気を風が攫って行く。 急に、今年中に会いたいと思った。 駅からダッシュで走る。 酔いが回って気持ちが悪い。 外灯の光が少しだけ当たっている桜の木の下にコウさんの背中が見えた。 走っている俺も馬鹿だと思うけど、こんな所で座っているあの人も馬鹿だ。 「コウ…さん…」 息が上がって声がかすれる。 「シュウ…良かった。来てくれないかと思った」 「はぁ、18分前」 「え?…シュウ…」 冷たく凍りそうな小さな声。 息を整えてから、隣に腰を下ろした。 「メールからずっと居たんですか?」 「うん」 「ばっかじゃないの」 「ん…謝りたくて…今年中に。大人気なかった。シュウの気持ちも考えずに怒鳴ったりして、本当にすまなかった」 「…や、俺の方も…その…傷つけるようなこと言って…」 「うん…傷ついた」 「はぁっ?」 「昼間、石龍の竜崎さんが暮れの挨拶に来て、シュウが広告のこと、狐の修理のこと、台座の刻名のこと、お礼を言いに来てくれて、何か言いたそうにしてたけど、急いでて話出来なかった。120%お前が悪いって怒られた。それで、一緒に保志乃合神社に行って来た。ハクにお礼も言いたかったし…」 「そうですか…」 「人が大勢居て、忙しそうだったから話はしなかったけど、アオは皆んなに撫でらてにこにこしてた。女子に囲まれたアカリが仲直りしたか?って叫んでたけど…」 「…」 「また…一緒にPandora作ってくれたら嬉しい…」 「…」 腕がすっと動いて、一瞬頭を撫でられるかと思った。 差し出された手。 あの時も 「シュウ君が手伝ってくれるなら、2000にしようかな。宜しく」 宜しくと笑って手を差し出されたっけ。
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